コーディングを支える技術 ~成り立ちから学ぶプログラミング作法 を読みました。
プログラミングにおける機構の成り立ちとかを解説してくれる本でした。
if 文は何故あるの、関数は何故あるの、型は、スコープは、... みたいなことを「こういう経緯があって、この言語はこういうアプローチで解決した」という歴史を教えてくれる。なので、機構の名前と機能だけを解説するのではなく、むしろこういう経緯があったんだよー、って話の方がメイン。
取り上げられているトピックも多岐に渡ります。表紙に書かれている要素を列挙すると、演算子、繰り返し、関数、例外、スコープ、動的型付け、型推論、配列、辞書、スレッド、ロック、トランザクショナルメモリ、クラス、インターフェース、継承、委譲、C3線形化、Mix-in、トレイト となっています。かなりの範囲をカバーしてそう。
あと、複数の解決方法を知ることができるので、言語Aの機構Bは言語Cの機構Dと似ててここが違う、とかが分かるのも良いところ。例えば Ruby の Hash は、他の言語では Dictionary だったり HashMap だったりとか。
さらにおもしろかったのは、同じ単語に対して異なる解釈があること。
私は Ruby をよく使っているので「オブジェクト指向」と言えば「オブジェクトにメッセージを送ることによってオブジェクトそのものに振る舞わせる」ことだと解釈するのですが、C++では「オブジェクト指向」と言えば「ユーザ定義型であるクラスによる処理の再利用」となっていたり。オブジェクト指向に限った話で言えば Perl での処理の共通化、 JavaScript での prototype など、言語による解釈や実装がいくつもあるのだなー、と。
読む前は「オブジェクト指向はクラスだ」という言葉は「なんでメッセージの話が出ないんだろう」と思いましたが、「(ある言語における)オブジェクト指向はクラスだ」みたいに主語が隠れてるんだろうなー、と。
そういう意味でも、自分の知ってる言語の機構名だけで考えるんじゃなくて成り立ちを知ることや他の言語を知ることには利点がありそうだなー、とか。
この本で機構そのものを学ぶというよりは、今までそんなに意識せずに使っていた機構にまつわる経緯は何なのか、とかを知る本です。
なので、ある程度プログラミング言語に触ってから読むと、おまじないにしていた謎が解けたりするかもしれません。
プログラミング言語の勉強の始めに読むのには向いてないけれど、言語の勉強に詰まった時や歴史を知りたい時とかに読むのが良さそう。